2021年に成立した民法の改正法は、物権編と相続編の条文を改正するものです。
「相続法がまた改正になったの?最近改正が多くてわけがわからない。」
「債権法改正・相続法改正があったばかりなのに、また改正したのか。。。」
「最近の民法改正は、これで最後でいいの?」
法律実務家としては、基本法である民法が改正されると、その対応に大きな労力を奪われますので、こういったお悩みがあるのはごもっともだと思います。
今回の記事では、これまでの主な民法改正と、今後予定されている民法改正について簡単に解説してみたいと思います。
なお、2021年の民法改正に関しては以下の記事をご覧ください。 また、私が出版した書籍「令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」でも、詳細な解説をしていますので、興味がある方はこちらもご覧ください。
(追記あり)2021年民法・不登法改正(6)新旧対照表とまとめ資料など
これまでの主な民法改正――2021年改正まで
民法典が制定・施行されてから現在までの主な改正を整理すると次のようになります。借地借家法をはじめ特別法の制定・改正を入れると量も多くなり、複雑になるので、今回は民法典の改正に絞って主な改正をピックアップしました。
1898年 | 民法典の施行 |
1947年 | 家制度の廃止 |
1971年 | 根抵当の新設 |
1980年 | 相続人・相続分等の改正(配偶者の相続分は3分の1から2分の1へ) |
1987年 | 特別養子制度の創設 |
1999年 | 成年後見制度の創設 |
2003年 | 担保法改正(短期賃貸借保護制度の廃止) |
2004年 | 民法現代語化、保証制度改正(保証人保護の拡充) |
2011年 | 親権の喪失の制度等の見直し、未成年後見制度等の見直し等 |
2016年 | 成年後見に関する改正(いわゆる死後事務の円滑化)、再婚禁止期間の見直し |
2017年 | 債権法改正 |
2018年 | 相続法改正、成年年齢引下げ |
2019年 | 特別養子関係(養子候補者の上限年齢の引上げ) |
2021年 | 物権法・相続法改正 |
2000年代まで、民法典はそう簡単には改正されない、改正されてもよほどの社会問題が発生している場合に限られるというのが傾向でした。
2010年代の後半以降に民法改正ラッシュが始まっていますが、債権法改正をはじめ抜本的な見直しも行われているという傾向があります。
これからの民法改正――家族法、担保法など
近年続いた大型改正ですが、2021年改正で終わりではありません。
現在、法制審議会に次のような専門部会が設置され、法改正の検討が進められています。
民法(親子法制)部会 …懲戒権、嫡出の推定、女性の再婚禁止期間、嫡出否認制度等の見直しが検討されています。 |
家族法制部会 …継続的な養育費支払いなどの課題に対応するための改正 |
担保法制部会 …動産担保・債権担保を中心とする担保法制の見直し |
具体的な法制化の目処はまだ経っていませんが、法制審議会で審議されている以上、近い将来、いずれも何らかの改正がなされる可能性は高いと思います。
引き続きこれらの動向も注視する必要があります。
この記事を書いた弁護士
弁護士 荒井達也
所有者不明土地問題というニッチな土地問題に詳しい弁護士です。日弁連所有者不明土地WG幹事として令和3年民法・不動産登記法改正に携わってきました。なお、情報発信用にTwitterアカウントを開設しております(@AraiLawoffice)。