【10分でわかる!】2021年民法・不登法改正のポイントをわかりやすく解説②改正法の概要

 今回は、2021年4月に成立した民法・不動産登記法等の改正法を、重要な改正項目に絞ってポイントをわかりやすく解説したいと思います。

1.改正の背景――所有者不明土地問題

 近時、相続登記がされないこと等により、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、又は、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地、いわゆる『所有者不明土地』が多数発生しています(総面積は九州本土よりも大きいといわれます。)。

 問題の原因として

 ・相続登記の申請は義務ではなく、申請しなくても困らないこと

 ・都市部への人口移動や人口減少、高齢化の進展等により、土地の所有意識が希薄化していること

 等が指摘されています。

 所有者不明土地は

 ・相続が繰り返され、土地共有者がねずみ算式に増加したり、

 ・所有者の探索に多大な時間と費用が必要になったり、

 ・土地が管理されず放置されたりする

 といった問題があります。

2.法改正の概要――ポイントは発生予防と事後利用

 今回の改正は、(A)所有者不明土地の発生予防と(B)既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化の両面から、民法や不動産登記法などの民事基本法制を見直すものです。

 以下では、(1)不動産登記法(発生予防策)、(2)民法(事後利用策)の順に、改正法・新法の概要を解説したいと思います。

(1) 不動産登記法の改正――登記を最新の状態にアップデート!

 所有者不明土地は、いわば不動産の登記情報が古い状態のままになっている土地のことです。

 そのため、相続や住所変更などの情報を登記に反映すること、すなわち、登記を最新の状態にアップデートが問題解決のために重要になります。

 今回の不動産登記法の改正では、

  ①相続登記・住所変更登記の申請義務化

  ②相続登記・住所変更登記の手続の簡素化・合理化

 がパッケージで導入されることになりました。

①相続登記・住所変更登記の申請義務化

 改正法は、不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けました。

 正当な理由のない申請漏れには10万円以下の過料が科されます。どういった場合に正当な理由なしと判断されるかは、法務省が近い将来通達を出す予定です。

 また、改正法では、不動産を所有する人について住所や氏名の変更があった場合、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けることになりました。

 この場合も、正当な理由のない申請漏れには5万以下の過料が科されることになります。

②相続登記・住所変更登記の手続の簡素化・合理化

ア 相続人申告登記(仮称)の新設

 改正法では、相続登記の義務化と併せて、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたことにするという規定が設けられました。この相続人申告登記は、相続人一人ひとりが単独で申告することができ、添付書面も簡略化されているため、相続登記の申請義務を簡易に履行することが可能になります。

イ 死亡情報等の公示

 登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示する仕組みが設けられました。これにより、登記で登記名義人の死亡の有無の確認が可能になります。理想的には、法定相続人まで登記に反映されればよかったのですが、情報連携の技術的な制約から死亡情報等に限定されています。

ウ 所有不動産記録証明制度の新設

 先代が所有していた不動産が相続人が知らない――最近はこういったケースが増えています。そこで、相続登記の際に、登記漏れを防止するために、所有不動産記録証明制度が創設されることになりました。これは、いわゆる名寄せを可能にするもので、この制度により、特定の者が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行し、相続登記が必要な不動産を容易に把握することができるようになります。

エ 登記官による住所変更情報の反映

 登記官が、生年月日等の「検索用情報」を用いて住民基本台帳ネットワークシステムに照会し、所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得し、それを不動産登記に反映する仕組みが設けられています。これにより、転居や本店移転等に伴う住所等の変更が簡便な手続で登記に反映されることになります。

【補足】相続土地国庫帰属法――望まず相続した土地を国に

 なお、今回の民法・不動産登記法改正と併せて、所有者不明土地をこれ以上発生させないために、相続人が相続により望まず取得した土地(所有者不明土地予備軍)を国が引き取る制度が創設されました。

 この新制度については別の記事で解説していますので、ご興味がある方はこちらをご参照ください。

【弁護士が解説】2021年成立!相続土地国庫帰属法の概要【土地所有権を放棄できる法改正?いつから?】

(2) 民法の改正――不明土地の利用・管理を円滑に

①共有物の利用の円滑化を図る仕組みの整備

 相続登記の未了により所有者が不明化した土地の多くは、相続人による共有状態になっています。そこで、共有物の利用の円滑化を図る仕組みとして、裁判所の関与の下で、不明共有者等以外の共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度が創設されました。また、より抜本的な解決手法として、裁判所の関与の下で、不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みが創設されました。これらにより、不明共有者がいても共有物の利用・処分を円滑に進めることが可能になります。

②長期間経過後の遺産分割の見直し

 遺産分割は、通常、個別案件ごとに相続人の貢献度(寄与分)や生前に相続人が受けた援助(特別受益)を考慮して行いますが、相続から長期間が経過すると、証拠の散逸などにより、このような形での遺産分割が困難になることから、相続開始から10年を経過したときは寄与分などによる分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行うルールが設けられました。これにより、遺産分割長期未了状態の土地の解消が促進されることになります。

③土地の管理に特化した財産管理制度の創設

 個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度が創設されました。裁判所が選任した管理人は、裁判所の許可を得れば、所有者不明土地・建物を売却することができます。これにより、所有者不明土地・建物の管理が効率化・合理化することになります。

 また、所有者による適切な管理がなされず、放置されている土地・建物(例:ゴミ屋敷、廃墟)が他人の権利を侵害するおそれがある場合に、裁判所が管理人を選任することができる制度も創設されました。これによって、管理不全化した土地・建物の適切な管理が可能となります。

④ライフラインの設備設置権等の規律の整備

 電気、ガスなどのライフラインを自己の土地に引き込むための設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できる仕組みが整備されました。これによって、ライフラインの引込みを円滑化し、土地の利用が促進されることが期待されます。

 

記事のまとめ

  • 2021年4月、所有者不明土地問題を解決するために、民法改正等が行われました。この改正は、①所有者不明土地の発生予防と②既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化の両面から民法や不動産登記法などを見直すものです。
  • 不動産登記法の改正では、所有者不明土地をこれ以上発生させないために、相続登記・住所変更登記の申請義務化と手続の簡素化・合理化がパッケージで導入されました。
  • 民法の改正では、既に発生した不明土地の円滑な利用・管理のために、①共有物の利用の円滑化を図る仕組みの整備、②長期間経過後の遺産分割の見直し、③土地の管理に特化した財産管理制度の創設、④ライフラインの設備設置権等の規律の整備などが行われました。

 なお、以上については、以下の資料のほか、私が出版した書籍「令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」で詳細がわかりますので、興味がある方はこれらもご覧ください。

この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也

 所有者不明土地問題というニッチな土地問題に詳しい弁護士です。日弁連所有者不明土地WG幹事として令和3年民法・不動産登記法改正に携わってきました。なお、情報発信用にTwitterアカウントを開設しております(@AraiLawoffice)。