【いつから?】2021年民法改正で寄与分制度はどう変わる?【2023年4月1日から/遡及適用もあり!】

2021年民法改正により寄与分制度が変わります!

 2021年(令和3年)に民法が改正されました。この改正により、民法の寄与分制度に関するルールが大きく変わります。

 新しいルールの適用開始時期(施行時期)は、2023年(令和5年)4月1日です。

 なお、施行自体は少し先なのですが、施行前に発生した相続にも適用があるため、この点は注意が必要です。

 そのため、「施行はまださ先だから関係ない!」と考えるのは危険です。

 今回はこの寄与分制度の見直しのポイントをわかりやすく解説したいと思います。

寄与分制度はどう変わった?

(1) (前提)遺産分割の基本的なルール

 まず、前提として遺産分割の基本的なルールをお話します(ご存知の方は飛ばして(2)に移動してください)。

 通常、相続が発生し、相続人が複数いると(例:配偶者の方やお子さんがいる場合)、遺産(相続財産)となる土地や建物、動産、預金などの財産は、原則として相続人による共有(遺産共有)状態となります(現民法898参照)。

 そのうえで、遺産分割協議(合意)や家庭裁判所の遺産分割審判・調停により、遺産(相続財産)の最終的な行先を決めることになります(例:配偶者に金銭以外の財産をすべて相続させて、残りの相続人には金銭を支払う等)。

 なお、この遺産分割の際に、各相続人が、どれくらい割合で相続することができるかを決める基準があり、この基準を具体的相続分といいます。

 よく配偶者は2分の1の相続分があり、子どもはその残りを頭割りで割った相続分があるということがありますが、これはここでいう具体的相続分ではなく、法定相続分を指しています。

 言い換えれば、法定相続分は、民法であらかじめ定められている画一的な割合です(例:配偶者と子(2人)が相続人の場合は配偶者1/2、子1/4ずつ)。

 他方で、具体的相続分は何か?というと、法定相続分等を事案ごとに修正して算出する割合のことをいいます。例えば、相続人のうち生前贈与(特別受益)を受けていた相続人の相続分については法定相続分より少ない相続分としたり、逆に自己の財産を犠牲にして多大な貢献をしてきた相続人の相続分については、法定相続分より多い相続分としたりします。後者のことを法的に『寄与分』といいます。

(2) 旧法下の問題点

 旧法下では、遺産分割について期限がなく、遺産分割をせずに長期間放置をしていても寄与分がある相続人等に不利益は生じない建付けとなっていました。その結果、相続人に遺産分割のインセンティブ(動機)が働きにくいという問題がありました。

 加えて、相続開始後に、遺産分割がないまま長期間が経過すると、生前贈与(特別受益)や寄与分に関する書証等が散逸し、関係者の記憶も薄れることになります。その結果、相続開始から長期間が経過すると、具体的相続分の算定が困難になり、具体的相続分による遺産分割が難しくなるという問題もありました。

(3) 改正法による新ルール

 そこで、改正法では、相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分等で行うというルールが設けられました(新民法904の3)。

 ただし、次の2つの場合は、例外的に、引き続き具体的相続分による遺産分割が可能とされています。

 ① 10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき

 ② 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由(※)が相続人にあった場合において、当該事由の消滅時から6か月経過前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき

 ※ 被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割請求をすることができなかった場合等はやむを得ない事由があると考えられます。

 この新しいルールによって、①寄与分がある相続人等に早期の遺産分割を促す効果が期待できるとともに、②10年経過後は、画一的な割合である法定相続分を基準として円滑に分割を行うことが可能になることが期待されています。

(4) 遡及適用に要注意!

 なお、上記の新しいルールは、改正法の施行日前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても適用されることになっています(改正法附則3)。

 一般的に法律の改正は施行後に生じた出来事に適用されるのですが、今回の新ルールは施行前の出来事(相続)にも適用されます。この点はかなり特殊ですので要注意です。

 その上で、現状、相続開始から10年以上遺産分割がされていないケースというのは世の中に多数存在するため、経過措置が設けられています。

 具体的には、まず、施行日前に発生した相続に新ルールを適用する場合でも、少なくとも施行時から5年の猶予期間が与えられることになっています。

 そのため、 相続開始後から10年以上遺産分割がされていないケースで、「まずい!寄与分を主張できなくなる」と思う方がいらっしゃっても、施行から5年は猶予があることになります。

 なお、ややこしいのですが、施行前に発生した相続でも、その相続開始から10年後の日が猶予期間の5年の最終日より後になる場合は、相続開始から10年後の日が終期となります。

最後に

 いかがでしたか?今回は2021年(令和3年)の民法改正により改正されることになった寄与分制度を解説しました。

 今回解説した改正が条文にどのように反映されているかについては、以下の資料をご参照ください。

 なお、今回の記事の参考文献はこちらです。法務省民事局が作成している、信頼性のある資料です。

 また、私が出版した書籍「令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」でも、詳細な解説をしていますので、興味がある方はこちらもご覧ください。

この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也

 所有者不明土地問題というニッチな土地問題に詳しい弁護士です。日弁連所有者不明土地WG幹事として令和3年民法・不動産登記法改正に携わってきました。なお、情報発信用にTwitterアカウントを開設しております(@AraiLawoffice)。お問い合わせはこちらからもどうぞ。

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