はじめに――相続人調査と同意取得がポイント
相続人が多数いる土地について、遺産分割をスムーズに進めるためには、
- 相続人調査をスムーズに進めること
- 相続人からの同意取得をスムーズに進めること
が重要です。
相続人が多数いる土地については、進め方を間違えると、手続に2年ほど掛かったとか、膨大な手間ひまが掛かったということになります。
相続人調査をスムーズに進めること
結論:「長期相続登記未了土地解消作業」の経験がある事務所にお願いする
結論としては、相続人調査に慣れている法律事務所や司法書士事務所にお願いするのがよいです。
特に『長期相続登記等未了土地解消作業』の実績がある司法書士事務所さんは相続人調査を効率的に進めるノウハウがあるため、オススメです。
私は、全国の司法書士さんとお付き合いがあるため、もし司法書士事務所をお探しの場合はお気軽にご連絡ください。
なお、一般の方でも相続人調査を行うことは可能ですが、以下に述べる理由でオススメはしません。
なぜ相続人調査は時間と手間が掛かるか?
理由①戸籍の取り寄せが大変だから
相続人が多数いるということは、土地の名義人が昔の方である可能性が高いです。
昔の方の場合、取り寄せる戸籍も多くなり、時間や費用が掛かります。戸籍の請求書作成や郵便の準備等、事務量も膨大になります。
また、最近は普通郵便の配達に時間が掛かっているため、一つの戸籍を取り寄せるだけで、1週間から2週間掛かるという場合も少なくありません。
例えば、戦前から相続登記がなされていないケースであれば、3か月から6か月程度を見ておく必要があります。
もちろん、速達を使えば多少圧縮できますが、そこまでの費用が掛けられないという場合は、とにかく早めに動くことが大事です。
理由②昔の相続ルールが難しいから
また、昔の方の相続には昔の相続法が適用されます。
例えば、戦前については家督相続という今とは違う相続のルール(ざっくり言うと長男だけが相続するというルール)が基本的に適用されていました。
他方で、稀に「遺産相続」という特殊な相続ルールが適用される場面もありました。
こういった過去の相続のルールをきちんと理解していないと相続人調査で間違ってしまいます。
そうすると、その後の手続をやり直す必要が出てくるため、相続人調査を正確に行うことはかなり重要なポイントとなります。
弁護士や司法書士であっても、この辺に詳しい方とそうでない方がいますので、できるだけ詳しい方にお願いすることがよいです。
まとめ
相続人調査は戸籍の取り寄せが大変で、適用される相続のルールも複雑になります。
そのため、相続人調査は慣れている弁護士事務所や司法書士事務所にお願いすることがよいです。
なお、私は弁護士ですが、弁護士目線で見ると『長期相続登記等未了土地解消作業』の実績がある司法書士事務所さんがよいです。
ただし、裁判手続が必要な場合は弁護士との連携が必要になるため、司法書士事務所に相談する際にその点も確認するとよいでしょう。
相続人からの同意取得をスムーズに進めること
結論――お手紙と裁判所の手続
相続人からの同意取得をスムーズに進めるためには、①事前にお手紙で事情を説明し、必要書類の提出を求めつつ②非協力な相続人がいる場合は遺産部調停等の裁判手続を利用することが重要です。
事前にお手紙で事情を説明する!
相続人が多い場合、各相続人から同意を得る手続がとても大変です。
相続人が地元に居住していれば、多少手間も少なくなりますが、地元で完結することはほぼありません。
東京や政令指定都市に出ているということはよくあることですが、北海道や九州・沖縄にいることもあります。
そのため、一人ひとり丁寧にお会いしてお話するという方法を採ると膨大な費用と時間が掛かることになります。
こういった場合に使うのがお手紙を送るという方法です。
お手紙を送り、必要書類の提出を求めると、効率的効果的に進めることができます。
なお、弁護士等の専門家を含め、こういったお手紙を送らずに、いきなり裁判手続を起こす方がいらっしゃいますが、余計な反発を招くだけですので、あまりオススメできません。
私が過去に取り扱った案件で使用したものを参考に作った文例を以下に示します。
実際は、事案に応じて作り込む必要があるため、これを送れば大丈夫という趣旨のものではないことはご理解ください。
裁判所の手続を利用する!
お手紙を送っても返答がない、又は、非協力的な回答があった場合の対応として遺産分割調停という方法が考えられます。
「調停」とは、裁判所を通じて行う話合いの手続を意味し、手紙では何ともならなかった相手でも、裁判所からの説得で話し合いに応じてくれるということがあります。
また、仮に、相続人が裁判所から手紙等を無視したり、非協力的であったりすると、裁判所が「調停に代わる審判」ということで、一刀両断で結論を出してくれることがあります。
調停を申し立てた側の言い分が不合理でなければ、その言い分を裁判所がそのまま認めてくれることも少なくありません。
具体的な進め方は弁護士に相談する必要がありますが、裁判手続を使うことで、結果的にスムーズに進む場合があります。
また、遺産分割調停以外にも共有物分割訴訟や時効訴訟などの裁判手続がありますので、どのような裁判手続を利用するかはケースバイケースの判断が必要です。この点については、別の記事で解説していますので、そちらをご参照ください。
おわりに
いかがでしたか?今回は、相続人が多数いる土地について、遺産分割をスムーズに進めるために重要な
- 相続人調査をスムーズに進めること
- 相続人からの同意取得をスムーズに進めること
について解説させていただきました。
実際に法的手続を検討する際は弁護士にご相談されることをお勧めします。
なお、この論点については、私の方でも無料相談を承っていますので、顧問弁護士その他の相談できる弁護士がいない方は当職までお気軽にご連絡ください。
この記事を書いた弁護士
弁護士 荒井達也
所有者不明土地問題というニッチな土地問題に詳しい弁護士です。日弁連所有者不明土地WG幹事として令和3年民法・不動産登記法改正に携わってきました。なお、情報発信用にTwitterアカウントを開設しております(@AraiLawoffice)。お問い合わせはこちらからどうぞ。