令和3年民法・不動産登記法改正に関するご質問を整理させていただきました。

※なお、文献の引用がない部分については著者の私見になります。

共有制度の見直し

持分価格の過半数で実行できる軽微変更(改正後民法251条1項)でいう「形状の変更」や「効用の変更」はどういった意味ですか?

改正後民法では、形状又は効用の著しい変更を伴わないものが持分価格の過半数で実施できることとされています(同法251条1項及び252条1項)。ここでいう「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいいます。事案にもよりますが、例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると解されます(以上につき、法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(https://www.moj.go.jp/content/001355930.pdf)30頁)。

今回の共有制度の見直しにより、境界確認の実務はどう変わりますか?

共有制度の見直しにおいて、境界確認の実務を直接的に変更しようとするものはありません。もっとも、新しい相続財産管理制度の活用、軽微変更としての過半数による決定、共有物の変更に関する新しい非訟手続の活用の余地は否定されていないと考えます。この点については、拙著336頁以下で検討していますので、ご関心がある方はご参照いただければ幸いです。

共有物の変更・管理に関する非訟手続を利用し、借地権等の長期の土地利用権を設定することはできるのですか?

共有物の変更・管理に関する非訟手続に関する部会資料30、同41、同51をたどると、持分喪失行為以外は長期の賃貸借を含め広く対象とする方向性で検討している点には変更がないため,この制度の利用対象に長期の賃借権の設定も含まれると解することができそうと考えております。なお、賃借権設定登記等の対抗要件の具備ができるかについて明確ではないため、今後の動向を注視する必要があります(民事局長回答昭和48年10月13日付け民三第7694号参照)。

共有物の変更・管理に関する非訟手続を利用し、境界確認を行うことはできるのですか?

(作成中)

所在等不明共有者に不在者財産管理人や所有者不明土地管理人が選任されている場合、共有物の変更・管理に関する非訟手続を利用することはできるのですか?管理人がいれば、管理人と協議するべきであり、この手続の利用が認められるのには違和感があります。

ご質問の点に正面から答える部会資料や法務省関係者の発言はなかったと記憶しております。そのうえで暫定的な私見ですが、管理人の有無にかかわらず、共有者が不明であれば、この制度の要件を充足すると考えます。理由としては、①形式的理由(文言解釈)と②実質的理由があります。まず、①形式的理由(文言解釈)として、管理人がいれば所在等不明ではないというのは文言解釈として難しいと考えます。また、②実質的理由として、管理人がいれば不明にならないという論理を突き詰めると、不明土地管理人だけではなく、不在者財産管理人、相続財産管理人、成年後見人、任意代理人等がいた場合も不明ではないと扱う必要が出てくると思います。しかし、そうしてしまうと申立をする側としては、あらゆる管理人・代理人がいないことを調査する必要が出てくると思われ、逆に不都合が生じると思います。不明土地管理人のように登記されればわかりやすいですが、その他の管理人は調査も限界があると思いますし、何より煩雑です。ただ、不明土地管理人が選任され、登記上明らかになっている場合は不明要件の充足を認めた上で、申立権の濫用とする余地もあろうと思います(そのうえで手続上は却下、棄却、準再審で処理することになろうかと思います。)。なお、非訟事件に関する申立権の濫用については、株式取得価格決定申立事件で、これを認めた裁判例があるようですので(東京地決平成27年3月4日金判1465号42頁)、理論構成としてはありうると考えます。

共有物の変更・管理に関する非訟手続を利用し、裁判所から決定が出たが、その直後に所在不明となっていた共有者が出てきた場合、裁判所の決定の効力はどうなるのですか?

この制度による裁判所の決定はそもそも確定しなければ効力が生じません(改正後非訟法85条5項)。そして、この場合の裁判所の決定は「終局決定」に該当すると思われますが※1、終局決定に対しては、即時抗告が可能であるため(非訟法66条1項)、2週間の即時抗告期間内であれば(非訟法67条1項参照)、所在不明とされた共有者は即時抗告を行い、その中で決定の効力を争うことができると考えられます。他方で、2週間の即時抗告期間の経過し、終局決定が確定した後は裁判所の決定に効力が生じることになりますが、この場合は、いわゆる準再審(非訟法83条1項)の手続により不服申立てを行うことになると思われます(なお、準再審の概要については、金子修編著「一問一答非訟事件手続法」(商事法務,2012)19頁参照)

※1 終局決定(非訟法55条以下)は、非訟事件について終局的判断をする裁判を意味します。終局決定は、本案についての裁判所の判断(民事訴訟の「判決」に相当するもの)です。これに対し、終局決定以外の裁判(非訟法62条)は、終局決定のための手続の派生的事項または付随的事項についての裁判所の判断であるか、本案についての判断であっても終局的な判断でないものを意味し、移送に関する決定、中間決定(非訟法61条)や更正決定(非訟法58条)等がこれに該当します(以上につき金子修編著「一問一答非訟事件手続法」(商事法務,2012)121頁参照)。本文で述べた決定は改正後非訟法85条の非訟事件に関する終局的判断をする裁判に該当すると思われます。

改正後民法258条の2により、相続から10年経過後の遺産共有持分を共有物分割訴訟で分割できることとしたのはなぜですか?

 非常に分かりにくいところですが、私なりの言葉でご説明すると以下のとおりです(なお、拙著101頁以下もご参照ください。)。
(1) 旧法では、通常共有と遺産共有が併存する共有物については、①共有物分割訴訟+②遺産分割の両方が必要でした。
(2) しかし、特に数次相続が発生している場合等では最終的な分割までかなりの手間暇が掛かります。これでは相続登記未了型の所有者不明土地の管理・利用に支障が生じます。
(3) そこで、相続開始から10年が経過した場合は、原則として、①共有物分割訴訟の中で遺産共有の解消まで行い、一回的に解決することとしました。ただし、例外として、相続人が調停を申し立て、かつ、異議が述べたときは(1)のルールが適用されます。
 これが今回の改正の趣旨です。
 ただ、そうすると、(3)で10年の経過を要求しているのに、加えて「異議がないこと」等を要求するべきなのかという疑問が出てきます(法制審民法・不動産登記法部会でもそのような方向での議論がなされました。)。しかし、法制審民法・不動産登記法部会では、寄与分などをはじめとした「遺産分割上の権利」を手厚く保護する趣旨で(3)のような要件を設定しました。すなわち、ここでいう「遺産分割上の権利」というものは、単に特別受益や寄与分等による分割の利益のみを指すのではなく、家庭裁判所で906条に従いながら一切の事情を考慮し、遺産全体を見つつ、必要に応じて配偶者居住権を設定するなどしながら分割を受けることができる権利を意味しております。例えば、共有物分割訴訟の対象となっている共有建物(二世帯住宅やペアローン共有物件等)に配偶者居住権を設定したいという場合は、10年を経過しても家裁での遺産分割を認める必要がありますが、この場合、「異議がないこと」という(3)の例外要件が利いてきます。この場合、配偶者は異議を述べれば、配偶者居住権設定への道が開かれます。なお、10年経過というのは実は寄与分などの期間制限とは完全に連結していません。例えば、10年を経過したが、やむを得ない事由があり、寄与分などが認められる状況であっても、改正民法258条の2第2項の適用があることになります。この場合、相続人は必要に応じて調停+異議を行っていく必要があります。

所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度を利用している場合、農地法の権利移転許可(第3条)はいつまでに得る必要がありますか?

(作成中)

財産管理制度の見直し

不在者財産管理制度と所有者不明土地管理制度で、裁判所の許可を得て土地を売却できる場合に差はあるのですか。

不在者財産管理制度は,あくまでも不在者の財産を保存するための制度であり,不在者の財産処分が当然に認められるものではありません。他方で、所有者不明土地管理制度の場合、所有者不明の不動産を適正に管理するとともに,その円滑,適正な利用を図るという本制度の趣旨に照らし、①適正な土地又は建物の管理の観点から売却が相当であるかどうか、②不明とされた所有者の帰来可能性があるか、③売却によって所有者を害することにならないか、④売却代金が相当かなどの観点から総合的に判断して売却が相当な場合は売却が可能と解されます(令和3年3 月24日付け衆議院法務委員会〔小出邦夫(法務省民事局長)発言〕参照)。ただし、不在者財産管理制度においても、これらの事情を踏まえ、例外的に売却許可が認められる場合もあります。私見ですが、以上を踏まえると、具体的な事案において、両制度で結論が変わらないという場合も少なくないと考えています。なお、以上を含めた、両制度の使い分けについては、本書Q99もご参照ください。

相隣関係規定の見直し

越境した枝の切除に関して、どのような見直しが行われたのですか?

こちらに簡単な概要記事を書きましたのでご参照ください(なお、より詳細な説明については168頁参照)。

【民法233条の改正はいつから?】枝の切除に関するルールが変わります!【2021年物権法改正】

改正前民法において、越境した根っこを切ってよいとされていたのはなぜですか?

相続制度の見直し

相続財産管理人に対して相殺の意思表示を行うことはできますか? New!!

作成中

相続土地国庫帰属制度の創設

相続土地国庫帰属制度は、施行日前に発生した相続により土地所有権を取得した人も利用できるのですか?

利用可能です。施行日前の相続には適用がない旨の限定がないため、この場合も利用できます(法務省民事局参事官室に電話照会済)。

田んぼや畑などの農地についても、相続土地国庫帰属制度は利用できますか?

利用可能です。相続土地国庫帰属法は、農地も制度利用の対象となることを前提に、農林水産大臣への意見聴取(同法8条)、国庫帰属時の農林水産大臣への通知(同法11条2項)、国庫帰属後の農林水産大臣による管理(同法12条)を定めています。

農地を国庫に帰属させる場合に、農地法3条の許可は必要ですか?

不要と考えます。農地法上、国又は都道府県が農地を取得する場合は、許可不要とされているためです(同法3条1項5号)。

土地所有権の放棄制度の創設が見送られたと聞きましたが、どのような経緯があったのですか?

山野目先生が国会(衆院法務委員会)でお話されていた説明が簡にして要を得ていますので引用いたします。

法制審議会において、当初は民法において、土地の所有権の放棄というものの可否、その要件に係る規定を置くという構想を持っておりました。ところが、そのようにいたしますと、土地とともに動産や建物についても放棄の可否などを検討して規定を置くという話になってまいりますが、それらについて法律家の間に異論のない考察が熟しているかと申しますと、そうでもございません。そこで、端的に、立法事実として政策的要請のあるところを的確に捉え、個別法で処することとし、法的構成も、議員おっしゃられたように、放棄ということではなく、端的に国への帰属としてございます。

第204回国会 法務委員会 第5号(令和3年3月19日(金曜日))議事録参照※なお、この発言のその後の発言もとても重要ですのでぜひそちらもご参照ください。)

私なりにご説明すると、動産の放棄や建物の放棄という隣接分野への影響を懸念した民法研究者に配慮したからという理由になります(なお、拙著217頁【コラム】土地所有権の放棄構成が採用されなかった経緯」もご参照ください。)。

不動産登記法の見直し

相続人間で揉めているケースで相続人申告登記できるのですか?

可能です。ただ、相続人間で対立が先鋭で、相続人申告登記をすることによって紛争をより激化させてしまうおそれがある場合は、「正当な理由」が認められ、登記義務違反の過料が課されない可能性もあると考えられます。ケースバイケースの判断で難しい問題だと思います。

相続登記の義務化は遡及的に適用されると聞きましたが、相続人申告登記は今から(施行日前)でもできるのですか?

できません。施行日前に相続登記を行いたい場合、基本的には、遺産分割を完了させ、遺産分割に基づく所有権移転登記を行うか、法定相続分による相続登記を行うかのいずれかを検討することになります。

所有不動産記録証明書は、預金債権の仮差押等の際の疎明資料になりますか?

給与債権や預金債権に対して仮差押を行う場合、不動産等の他に差し押さえられる財産がないことを裁判所に対して疎明する必要があります。そこで、債務者が所有する不動産に関する記録はないと記載された所有不動産記録証明書を証拠として提出することが考えられます。もっとも、所有不動産記録証明書はあくまでも登記記録の証明ですので、それをもって実体法上何ら不動産を所有していないことを意味しません(例えば、相続により所有権を取得した土地について相続登記未了となっている場合、所有不動産記録証明書では所有不動産の記録なしになると考えられます。)。そのため、所有不動産記録証明書だけでは債務者が不動産を所有していないことを証明するものとしては不十分とされるケースも出てくるものと考えられます。ただ、有力な証拠の一つにはなると考えられるため、預金債権等の仮差押を検討する際は所有不動産記録証明書の取得・活用を検討するべきです。

所有不動産記録証明書を、債権者又はその弁護士が取得することはできますか? New!!

作成中

所有不動産記録証明書を、弁護士会照会の手続により取得することはできますか? New!!

作成中

表題部未登記の建物に相続登記の申請義務は課されるのですか?

課されません。改正後不登法76条の2は、「所有権の登記名義人について」とされており、そもそも未登記の建物はこの要件を満たしません。なお、建物については既に表題部登記の申請義務が課されるため、こちらの義務があります(以上につき法務省民事局民事第二課電話照会済み)。

表題登記のみで権利部の登記がない建物について相続登記の申請義務は課されるのですか?

課されません。改正後不登法76条の2は、「所有権の登記名義人について」とされており、「表題部所有者」はここに含まれませんので、表題部所有者が登記されていても、当該所有者の相続人に登記申請義務は課されません。改正後不登法76条の2は、移転登記の申請義務を課しており、保存登記の申請義務は課していないため、そのような観点からも、申請義務はないと解されます(以上につき法務省民事局民事第二課電話照会済み)。

100年経った休眠抵当権を職権抹消できる法改正はありますか?