【事例2】登記名義人27名の共有墓地を不在者財産管理制度を利用し整理した事例

概要

エリア広島県東広島市
地目墓地1筆
権利関係登記名義人27名の多数共有地(表題部登記のみ)
27名中23名の登記名義人が所在不明
推定相続人約300名
対応策不在者財産管理制度の利用
所要期間約6年
出典用地ジャーナル2021年月号4頁以下

 

弁護士コメント

 【事例1】でのコメントでも触れましたが、こういった多数の共有者が存在するケースで、まず検討すべきは、その共有地が狭義の共有地と総有地のいずれに該当するかという点です。

 本件では調査開始から約4年後に弁護士に相談し、弁護士から狭義の共有地ではないかとの見解を取得していますが、この点を整理しないと、その後に実施する手続も決まらないため(間違った手続で進めると水泡に帰すため)、もっと早く対応すべきです。

 また、23名分の不在者財産管理人の選任申立てを行っていますが、この手続は裁判所の手続ですので、法務局だけではなく、裁判所とも早期に協議すべきです。

 なお、一般的に、不在者財産管理人は不在者ごとに別の管理人(主に弁護士、司法書士等)を選任するため、23名分の申立てを行う場合、管理人の報酬(一般的には40万円前後)が23名分となる可能性があります。

 本件ではこの辺の事実関係が明確ではありませんが、記事を見る限り、1名の管理人が選任された可能性も考えられます。そうであれば、かなり画期的な事案であるともいえそうですが、この点は裁判所の判断次第というところもあるため、その意味でも、裁判所との協議は早急に行うべきです。

 ちなみに、不在者財産管理制度を利用すると、どうしても管理人報酬が必要になったりしますが、共有物分割訴訟を利用すれば、この手続の中で公示送達という行方不明者のための手続を利用することができ、その場合、管理人報酬等は不要になります。本件でも、公示送達の実施を念頭に共有物分割訴訟を利用する選択肢は十分にあったと思います。共有物分割訴訟については別の記事で解説したいと思います。

 最後に、令和3年民法改正により、所有者不明土地管理制度や所在等不明共有者からの持分取得制度等が創設されたため、これらの制度の施行(令和5年4月頃)以降は、こちらも選択肢になるでしょう。

 ほかにも気になる点が多々あり、かなりイレギュラーな案件だと感じます。この事例を参考にする際は関係官庁とも協議しながら慎重に進める必要があるでしょう。